第十一代将軍、徳川家斉に創設された五代目、野田岩。
江戸っ子の皆さんならご存じでしょう。
「てやんで、あたぼうよ!」
長く東京に住んでおりますが、野田岩を知らない方がおります、江戸っ子と呼んで宜しいでしょうか。
「てやんで、べらぼうめ!」
承知いたしました。江戸っ子であれば野田岩のうなぎを食べたことがある、あるいは知っていなくてはなりませんね。
本日は老舗、野田岩のうなぎお持ち帰りに関してご報告させていただきます。
さて、夏といえばうなぎです。
「夏バテ防止には”う”の付く食材を食べよ」
というエビデンスに乏しい習わしのため、この時期はうなぎを食べなければ恐ろしいことが起きる、、そんな焦燥にかられます。
本心では、このベラボー暑いのに脂っこい熱々うな重はちょっと、、という方も多いのではないでしょうか。私はそのたちです。胃弱の私は、うなぎで抜群に胃もたれを起こします。しかし味は大好きです。うなぎの味というか、もはやタレの味が好きなのかもしれないのですが、大好きです。たとえ胃がもたれてもいい、その代償を払ってでもタレ味のうなぎが食べたいのです。そんなわけで久しぶりに訪問する高齢の母から「うなぎが食べたいよー、買ってきてよー」と言われれば、二つ返事で「合点承知の助よ!」となるわけです。
しかしうなぎは高い、非常に高い。しかも老舗、野田岩のうなぎなんてもう、べらんめいに高い。けれど今日は江戸っ子を見習って、宵越しの金を持たない、有り金をはたいてでも、思い入れのある野田岩のうなぎを購入することにしました!
実はかれこれ20年前、我が家は麻布飯倉の野田岩本店三階の個室でクリスマスディナーを楽しんだメモリーがあるのです。30分間悶々とうな重を待ち、10分で食べ終わった、シュールなクリスマスイヴのメモリーが。きっと母も思い出してくれるでしょう、あのホーリーナイトを。
横浜高島屋地下一階へ
午前10時40分に横浜高島屋地下一階お総菜売り場、野田岩に到着しました。カウンターにはチャキチャキの売り子さん。その後ろでは「江戸時代から焼き手をしています」といった風貌のミスターいぶし銀が黙々とうなぎを焼きまくっております。これは絶対美味しい、もう雰囲気で美味しい、と喜び勇んでうなぎ弁当を購入しようとしたら、ここで残念なお知らせを受けます。先日、他施設、他店のうなぎ弁当で集団食中毒が起きたことから、一次的にお弁当の販売を中止し、蒲焼のみの販売とのことでした。
「てやんでい、バーローちくしょう!」
と思わず心の中で叫んでしましました。
しかし野田岩が悪いわけではないのです。保健所や百貨店側からの要求もあるでしょうし、大事を取っての苦渋の選択に違いありません。
私は串を抜いたうなぎの蒲焼を太っ腹に大2枚、中2枚を購入しました。
百貨店ギフトカードでお支払い?
百貨店ギフトカードでスマートに購入を試みましたが、残高が286円しかなく不足分12000円余りを旦那さんが支払ってくださいました。
「かたじけない。」
有り金286円をはたいてしまい、もう私にはPASUMOの残金しか残っていません。江戸っ子生活は大変です。
さて購入後、即座に母に電話をし、米を炊くようミッションを出しました。また、いかにうまく米を炊くかでうなぎの良さも変わるのだ、というプレッシャーも与えてやりました。
横須賀線で鎌倉駅へ
11時30分、母の住む鎌倉へ到着。江ノ電に乗りたいところですが、夏休み期間は、居住者が乗れないくらいの大混雑ですからタクシーで向かいました。その感もまだ温かなうなぎが膝に感じられ、幸福感で口元がほころびます。
ついに野田岩のうなぎを実食です。
12時15分、土鍋で炊いた米が茶碗に盛られました。ついに実食です。まずは、ほのかに温かいうなぎをそのまま一口。野田岩のうなぎは淡泊で脂が少なく、それでいながらホワッと柔らかく骨っぽさはありません。皮目が薄く、舌触りが良いところも素晴らしいです。当然ながら焦げ臭さは皆無です。次に山椒を振り、タレを少しかけてからいただいてみましたが、タレは甘さ控えめでシンプルです。デパ地下のうなぎ弁当で、タレの味を濃くしてうなぎの質をごまかすようなところがありますが、そういった逃げのタレではありません。正々堂々とうなぎに真っ向勝負を挑むタレです。
「このタレだけでご飯お代わりできちゃうなー」
と高校男児みたいなことを言いながらあっという間に食べ終わってしまいました。
野田岩のうなぎは職人気質のお味だと思います。
200年余うなぎを捌き、串を打ち、じっくり焼き、うなぎを愛でて辿り着いたのが、この簡素ながらに美味しい蒲焼なのでしょう。
ありがたいことです。こんなに素晴らしい逸品を家族といただけるなんて、私は本当に幸せです。
野田岩 横浜高島屋 お持ち帰り店 (うなぎ / 横浜駅、新高島駅、平沼橋駅)
テイクアウト総合点★★★★☆ 4.0